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ひずみゲージとは? 嚥下運動も計測! 医療・ロボット・スポーツ分野の未来を拓く伸縮性ひずみセンサの可能性

食べる、飲み込む、体を動かす――私たちがほとんど意識せずに行っているこれらの動きには、体の多くの器官が関わっています。なかには、ほとんど目には見えないようなわずかな筋肉の動きもありますが、これらの微妙な動きを捉える技術が、実は橋や機械部品の品質管理技術から生まれたことをご存じでしょうか。
この記事では、この「ひずみゲージ」という技術の基礎知識から、柔らかく伸びる新しいセンサが切り拓く医療・ロボット・スポーツ分野の可能性までをわかりやすく解説します。

ひずみゲージとは

「ひずみゲージ」とは、金属に力が加わって「ひずみ(伸びや縮み)」が生じると電気抵抗が変化するという原理を利用して、変化量を電気信号として検出するセンサのことです。 このセンサでは金属や構造物がどれくらい変形したのかを数値化できるため、目では確認できないようなわずかな変化を正確に捉えることが可能になります。

ひずみゲージは、もともとは工業分野で発展してきた技術で、日本では1950年ごろから橋や建物、機械部品の安全性確認や品質管理に欠かせない存在となってきました。代表的な利用例は、産業機械や自動車部品の耐久試験、建築物の劣化監視などです。こうした分野において「なにかが壊れる前に異常を察知する」ために、ひずみゲージは重要な役割を担っています。

その後、ひずみゲージは小型化・高性能化が進み、より身近な分野へと活用の幅を広げています。近年では工業用途にとどまらず、医療、ロボット、スポーツといった分野で、「人の動き」を測る技術として注目されるようになりました。

ひずみゲージの常識を変える! 驚きの柔らかいセンサ「C-STRETCH®」とは?

ひずみゲージ

しかし、ひずみゲージを使って「人の動き」を測るには大きな課題がありました。人の身体は建物や金属部品のように一定の形ではありません。それに対して従来のひずみゲージは金属箔などを使用した硬い構造が一般的で、「伸びる量」には限界がありました。そのため、柔らかく複雑に動く人体を測ることは困難だとされていたのです。

そこで登場したのが、バンドー化学が開発した「C-STRETCH®」のような伸縮性を持つひずみセンサです。このセンサは、ゴムのようにしなやかに伸び縮みするのが大きな特長で、従来のひずみゲージの常識を覆す存在となりました。

関節の曲げ伸ばしや筋肉の動きなど、複雑な変形を伴う動きであっても、伸縮性ひずみセンサであれば、皮膚の動きに自然に追従しながら計測が可能です。「C-STRETCH®」は非常に薄くて軽いので、首や関節など凹凸のある場所にも密着し、装着していることを意識させません。動きを妨げないため、日常動作に近い自然な状態で計測できる点も大きなメリットです。

伸縮性ひずみセンサの開発により、これまで測定が難しかった「人の動き」を、本人に負担をかけずにデータ化できるようになったのです。

なぜ「飲み込み(嚥下)」を測る必要があるの? 医療現場のリアルな課題

嚥下

伸縮性ひずみセンサの特長は、人がモノを飲み込む「嚥下(えんげ)運動」の計測においても重要な役割を果たします。高齢化が進む日本では、誤嚥性肺炎が大きな社会課題となっています。誤嚥性肺炎は、食べ物や唾液が誤って気管に入ることで引き起こされる肺炎ですが、主な原因は嚥下機能(飲み込む機能)の低下です。そのため嚥下運動を正確に評価し、早期に異常を発見することが求められています。

といっても、嚥下は喉の内部で起こる動きのため、外から見て判断することは困難です。見た目には問題なさそうでも、実際には飲み込みにくさを抱えているケースも少なくありません。そこで触診や聴診、内視鏡やスクリーニング検査などを行って、嚥下機能を判断・評価することが必要になります。

しかし、現在、行われているこうした評価方法も課題を抱えています。たとえば、「VE(嚥下内視鏡検査)」や「VF(嚥下造影検査)」は専門設備と医師が必要で、どこの病院やクリニックでも簡単に実施できる検査ではありません。また、触診や頚部聴診は評価者の経験や感覚に依存しやすく、結果にばらつきが出やすいという問題があります。

そこで、より客観的で手軽な嚥下評価の手段として、伸縮性ひずみセンサ「C-STRETCH®」の活用が注目されました。

嚥下運動を可視化!「B4S™」で変わる嚥下評価とは?

B4S

嚥下運動モニタ「B4S™」は、伸縮性ひずみセンサ「C-STRETCH®」を活用して嚥下運動を捉え、その変化を波形として可視化するシステムです。5本の高感度センサが嚥下中の喉の動きを捉え、嚥下回数や嚥下タイミングなどを計測し、データとして確認できる点が最大の特長です。

ほかにも嚥下運動モニタ「B4S™」には以下のようなメリットがあります。

●データの保存・共有が容易

専用アプリを通じて、計測データを保存・共有できるため、医師や言語聴覚士など医療スタッフ間で情報をスムーズに共有できます。評価の属人化を防ぎ、チーム医療を支えるツールとして期待されています。

●患者自身の理解と意欲向上

自分の嚥下状態を自分の目で確認できることで、「今、自分がどのように飲み込んでいるのか」を理解しやすくなります。これにより、嚥下リハビリテーションへの意欲向上や、効果の実感につながります。

B4S

●携帯性に優れている

小型軽量のデバイスなので容易に持ち運ぶことができ、さまざまな場面で客観的な嚥下評価を行う助けとなります。

医療・ロボット・スポーツへ広がる未来の可能性

ひずみセンサの未来

伸縮性ひずみセンサ「C-STRETCH®」は嚥下評価だけでなく、さまざまな分野での活用が期待されています。

●医療ロボットへの応用

人の肌のような繊細な接触や動きを検知できることから、e-skin(電子皮膚)として医療ロボットへの活用が注目されています。安全でやさしいロボット技術の実現に貢献する可能性があります。

●スポーツ・ウェルネス分野での活用

関節の動きや呼吸状態をモニタリングすることで、アスリートのパフォーマンス向上やケガ予防にも役立ちます。また日常の健康管理を支える技術としても広がりを見せています。

「C-STRETCH®」のような伸縮性ひずみセンサは、新しい「測る技術」として、研究者や開発者自身の多様なテーマにも応用できる可能性を秘めているのです。

まとめ

ひずみゲージは、単に物の変形を測る技術から、人の動きを支える技術へと進化しています。ゴムのように伸びる「C-STRETCH®」は、嚥下運動という見えにくい動きを可視化し、医療現場の課題解決に貢献しています。
今後、医療ロボットやスポーツ分野へも応用が期待されており、その可能性は広がる一方です。人と技術をつなぐ新しいひずみセンサは、未来のウェルビーイングを支えていくうえで、大きな役割を果たすことでしょう。

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監修:でぃすかばーBANDO編集部

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