画面に向かって手を出すと、なぜか“負けてしまう”。
そんな不思議なじゃんけんに、子どもたちは何度も挑戦します。
その体験の裏で動いているのが、神戸で生まれたセンサ技術です。
神戸の科学技術教育の拠点として親しまれてきた「バンドー神戸青少年科学館」は、2026年3月にリニューアル。体験を通じて科学に触れる展示がさらに充実しました。
今回は、科学館の取り組みとともに、体験型展示に関わった技術者の思いを伺いました。
科学に「ふれる・つくる・つながる」場所
――はじめに、「バンドー神戸青少年科学館」の成り立ちについてお聞かせください。
髙橋館長:
1981年に開催された「ポートピア'81」で神戸市が出展したパビリオンが、この科学館の原点です。博覧会終了後に施設を整備し、青少年の科学技術教育の拠点として開館したのが1984年になります。
以来、神戸における科学体験の場として多くの方にご来館いただき、2025年には累計入館者数1,500万人を達成しました。
――この施設のコンセプトをお教えください。
髙橋館長:
「ふれる・つくる・つながる」の3つです。
単に知識を学ぶだけでなく、体験から気づきを得て、自ら考え、さらに人と共有していく。そうした流れを生み出す場でありたいと考えています。
特に、来館者同士や研究者との関わりなど、科学をきっかけに生まれる“つながり”も大切にしています。

バンドー神戸青少年科学館
髙橋 館長
「体験すること」から始まる科学
髙橋館長:
館内には、物理や宇宙、生命、産業などテーマごとに分かれた展示室があり、多くが体験型の展示で構成されています。
例えば回転運動を体験できる装置や、操縦シミュレーターなど、身体を動かしながら理解できる仕組みが随所に取り入れられています。
「何が起きているのか」を考える前に、まずは「やってみる」。
その体験こそが、科学への入口になります。

髙橋館長:
身体を使って学ぶ展示だけでなく、視覚や音を通して科学に触れる体験も用意されています。
館内にはドームシアターが設けられており、最新の投影機によって、限りなく本物に近い星空が再現されています。単に映像を見るだけではなく、スタッフによる生解説が行われるのも特徴です。
プラネタリウムは星を映し出すだけの場ではなく、音楽や映像と組み合わせた多様な演出も行える空間になっています。来館されるたびに異なる体験ができるよう、オリジナル番組の制作にも取り組んでいます。
また、小さなお子さんやご家族でも安心して楽しめるプログラムを設けるなど、幅広い世代が気軽に訪れられる場づくりも大切にしています。

地元企業の技術にふれる展示
髙橋館長:
今回のリニューアルでは、「生命|産業」展示室が新設されました。
ここでは、神戸にある企業の技術を、実際に体験できる形で紹介しています。


いのち(生命ゾーン)のバンドー化学展示全景
“遊び”のようで、実は技術。じゃんけん展示の裏側
髙橋館長:
その一つとして展示されているのが、バンドー化学のコア技術を使った体験コンテンツです。
バンドー化学の伸縮性ひずみセンサ「C-STRETCH®」を取り付けたグローブを装着してじゃんけんをすると、「必ず勝つ」「必ず負ける」といった、不思議な結果になります。
一見ゲームのような体験ですが、その裏では、手や指のわずかな動きがこのセンサによって検知されています。
体験したあと、隣のパネルで仕組みを知る。
楽しさから理解へとつながる構成になっています。
――科学館側から見て、バンドー化学の展示にはどんな印象がありますか?
髙橋館長:
多くの企業の展示がありますが、バンドー化学の展示は来館者の関心が高く、体験を待つ方の列ができているのをよく見かけます。
「必ず勝つ」「必ず負ける」といった分かりやすい仕掛けがあることで、子どもたちが自然と足を止め、繰り返し体験しているのが印象的ですね。
何度やっても結果が同じになることで、「どうしてだろう」と考えるきっかけが生まれます。
そうした“気づき”につながる点が、この科学館の目指している体験と重なっていると感じています。
また、体験だけで終わるのではなく、その仕組みや実際の活用例まで知ることができる構成になっているため、科学への興味をより深く広げていく入口になっていると思います。



「分かりやすさ」と「伝え方」の試行錯誤
――今回の展示を企画する上で、どのような工夫がありましたか?
バンドー化学 太田:
体験として直感的に伝わることを重視しました。
この「C-STRETCH®」は、身体の動きを電気信号として取り出せるのですが、それをどう見せるかがポイントでした。そこで、誰もが知っている「じゃんけん」を使うことで、違いを分かりやすくできるのではないかと考えました。
一方で、展示として成立させるためには工夫も必要でした。
センサの動きを見せたいという意図と、安全性や耐久性をどう両立するか。実際の形になるまでには、いくつかの試行錯誤がありました。

バンドー化学 太田さん

技術は、どこで役立っているのか
バンドー化学 太田:
このセンサ技術は、実際の現場でも活用されています。
医療や介護の分野では、人の動きや状態を“数値”として捉えることが求められる場面があります。
例えば、
・関節の動きを測る
・呼吸の状態を把握する
・飲み込む力を評価する
といった用途で使われています。
これまで感覚に頼っていた変化を、客観的に数値として可視化することができる点に特徴があります。

ワークショップで見えた“気づきの瞬間”
――リニューアル当日には、実際にセンサを体験できるワークショップも実施されました。
バンドー化学 大高:
参加者は、伸び縮みするセンサを触りながら、その変化を体感。動きに合わせてロボットハンドが動く様子に、子どもたちは驚きながら何度も試していました。
「どうして動くの?」
「ほかにも使える?」
そんな問いかけが自然と生まれていたのが印象的でした。
体験から興味へ、興味から理解へ。
そのプロセスがその場で起きていました。

バンドー化学 大高さん

科学館が目指すこれから
――今後の展望についてお聞かせください。
髙橋館長:
科学と日常をつなぐ場所であり続けたいと考えています。
展示を見るだけではなく、体験し、人と出会い、考える。そうした機会をさらに増やしていきたいです。
また、企業や研究機関との連携も重要です。専門家の話を聞けるイベントや、工場見学など、科学館の外へ広がる活動も進めています。
体験が、科学の入口になる
髙橋館長:
科学への興味は、難しい言葉や知識からではなく、
「なんでだろう?」と感じた瞬間から始まるのかもしれません。
不思議なじゃんけんに何度も挑戦するその時間も、
新しい発見につながる入口のひとつです。
体験を通じて、科学に出会う場所――
バンドー神戸青少年科学館は、そんな役割を担っています。
訪れる度に新しい発見があると思いますので、ぜひご来館いただけたらと思います。
――ありがとうございました。

バンドー神戸青少年科学館とは
神戸・ポートアイランドにある体験型科学館。
1984年の開館以来、「ふれる・つくる・つながる」をコンセプトに、子どもから大人まで幅広い世代に親しまれています。
館内はテーマごとに分かれた展示フロアで構成されており、
物理現象や力のしくみを体感できる「物理|化学」、AIや通信などを扱う「情報の科学」、惑星や地球環境を扱う「宇宙と地球」、神戸の企業技術を紹介する「生命」「産業」など、多彩な視点から科学に出会えます。小さなお子さんでも楽しめる「サイエンスパーク」では、遊びながら科学の不思議に触れることができます。
また、実験や工作、プログラミングなどを体験できる「サイエンスラボ」では、ワークショップやクラブ活動が行われ、ものづくりの面白さを体験できます。

館内にはドーム型のプラネタリウムもあり、最新の投影機によるリアルな星空に加え、音楽・映像を組み合わせたプログラムも楽しめるほか、天体観測室では、国内最大級の屈折望遠鏡で太陽の黒点などを実際に観測することもできます。
このほかにも、企画展やイベント、講演なども定期的に開催されており、訪れるたびに新しい発見があるのも魅力のひとつです。
2026年3月のリニューアルでは、地元企業の技術を体験できる展示などが強化され、地域と産業、そして来館者をつなぐ役割もさらに広がっています。
バンドー化学とネーミングライツ
バンドー化学は2014年から、神戸市立青少年科学館のネーミングライツを取得し、「バンドー神戸青少年科学館」として施設運営を支援しています。
神戸に本社を置く企業として、地域社会とのつながりを深めるとともに、次世代を担う子どもたちが科学に触れる機会を広げることを目的とした取り組みです。
館内では、当社の技術を活用した体験型展示やワークショップを実施しています。製品や技術を単に紹介するのではなく、「触れて理解する」形で提供することで、科学への関心を引き出す役割を担っています。
科学館という公共の場を通じて、企業の技術と社会、そして未来世代をつなぐ。
ネーミングライツは、その関係性を形にした取り組みの一つといえます。




