サステナビリティ

トップメッセージ

変化の激しい時代であるからこそ経営理念に立ち返り、サステナビリティを成長戦略の基軸として実践していきます。
「調和と誠実の精神」を再定義し、変化への対応力を高めた1年間
2024年度は、中期経営計画「Creating New Value for the Future 1st stage」(以下、CV-1)の折り返し地点として、重要な節目の年でした。振り返ると1年目の2023年度は、激変する事業環境に柔軟かつスピーディに対応するべく、既存の業務の進め方を見直し、新たなやり方へ一歩を踏み出した転換の年でした。そうしたなか、各拠点での対話において浮かび上がってきたのは、当社の経営理念に対する理解や浸透が、いまだ十分とは言えないのではないかという気づきでした。とりわけ、経営理念に掲げる「調和」という言葉には社内で様々な解釈があり、収斂させる必要があるという想いがありました。
「調和」とは何か―CV-1の1年目から2年目へ移行する時期に、この問いに私自身もあらためて向き合うことになりました。入社以来、「調和と誠実の精神」を当社の理念として念頭に置いてきたものの、その本質について深く考えたことがなかったことに気づかされました。単に仲良くすることではなく、同調圧力に屈することでもなく、異なる意見を率直に述べ合い、十分に話し合ったうえで共通の目標に向かって歩むことこそが、私たちの目指す「調和」であると再認識したのです。
そこで2024年度は、新たな業務スタイルの定着を図ると同時に、あらためて原点に立ち返るべく、CV-1の1年目よりも多くの拠点を訪問し、従業員との直接対話を強化しました。各地で生の声に耳を傾けるとともに、前述の「調和」の再定義を明文化し、従業員一人ひとりと共有することで、経営理念の浸透を進めていきました。同時に、「スピード感」と「柔軟性」というキーワードも、組織全体に根づかせるべく繰り返し伝えていきました。ビジネスはもとより、サステナビリティ領域においても変化のスピードは加速しています。これからの時代を切り拓くには、変化に迅速に対応しつつ、さらに先の変化に対しても柔軟に対応し続ける姿勢が不可欠であると確信しています。
サステナビリティを成長戦略の基軸として推進―中期経営計画2年目の総括
指針1「価値創造」においては、既存製品に新たな価値を加えた新製品の開発が進みました。世界初となるセルロースナノファイバー複合化ゴムを適用した「高負荷対応ダブルコグベルト」の販売開始に加え、装飾表示用フイルム「バンドー グランメッセ®」の新製品では、高耐候性と環境負荷低減を両立しています。ヘルスケア機器である嚥下運動モニタ「B4S™」導入のお客様には無償で「口腔機能向上加算」算定支援ツールの提供を開始しました。さらに、AIを活用した農業自動収穫ロボットを中心に生産者向けサービスを提供するinaho株式会社への出資や、カナダのInmotive Inc.との電動二輪車/三輪車向け二段変速機における戦略的パートナーシップ契約を締結するなど、スタートアップ企業との共創を通して新たな価値創造が着実に進展しました。2025年度は、共創を軸に新規事業の進化とコア事業の深化をさらに加速させ、成長領域の拡大とキャッシュ創造の最大化を図ります。
指針2「スマートものづくり創造」においては、「バンドー夢工場」の実現に向けた活動が進捗し、スマート製法の開発を担うデジタル人財の育成にも注力しました。加えて、コスト競争力のある世界最適生産の実現に向けて、2025年3月をもってBandoUSA, Inc.での生産を終了し、販売機能に注力することを決定しました。2025年度は、「バンドー夢工場」が掲げる、安全・安心で地球環境にやさしいものづくりに向けて引き続き「安全原点回帰」や「安全衛生方針」に沿った活動を徹底するほか、生産性、資源、エネルギー効率を高める技術・製法開発、AI/IoT/ロボット技術を活用した工程開発等に注力します。加えて、現場力の強化、「品質方針」に沿った活動により、高い品質と稼ぐ力を創出していきます。
指針3「未来に向けた組織能力の進化」においては、役員を含む部長級以上を対象とした360度フィードバックを実施し、上司・部下の双方向で新たな気づきを得ることで、各人の成長と組織能力の進化を図りました。2023年度から当社単体でスタートした業務改革研修については、国内連結子会社メンバーの参加や研修2年目のフォローアップ研修等によって、業務改革・改善の質や量を充実させました。2025年度は、グローバルな組織ガバナンスの再構築に向けて重点課題への選択と集中を行い、グローバルでやり遂げる組織体制を構築するほか、販売拡大と業務効率化に向けたIT投資にも注力します。また、マネージャーやリーダーの行動変容を促す施策や、目指す組織風土の実現に向けた取り組みを加速することで、エンゲージメントの向上を図ります。
外部環境認識とリスクへの対応策
国内外で過去数年来続いてきたVUCA※の様相は2025年以降さらに強まる傾向にあります。こうしたなか、リスクへの対応にあたっては、世界4極(日本/アジア/中国/欧米他)による連携とリスク分散のもと、「短期」「中期」「長期」の視点を駆使することで、リスク影響の最小化と機会の最大化を図ります。具体的には、関税の引き上げやサプライチェーンの変動といった短期的要因に対しては、現場の状況を見極めながら迅速に判断することで、何をどこでつくり、どこへ届けるのが最適かという視点でサプライチェーンを再構築し、最適な打ち手をスピーディに講じていきます。一方、技術開発や製品開発といった中長期的な課題については、腰を据えて粘り強く課題解決に向けて取り組むことで、成果につなげていく所存です。
※ Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)
「サステナビリティ活動テーマ」
2024年度および足元の取り組み
運用7年目となった「サステナビリティ活動テーマ」(旧「CSR推進テーマ」)について、2024年度は各テーマにおいて様々な進捗がありました。
【製品・サービス】
2024年度の当社上市製品に占める環境対応製品の割合は71.8%となり、目標(当社単体50%以上)を達成することができました。また、着脱時の空気圧・電力等の動力源が不要である協働ロボット用ツールチェンジャ「QUICK-CHANGE ATOM®」や、製造方法の変更によりCO2排出量を削減した自動車向け補機駆動用伝動ベルトなど5品目を新たなeco moving対象製品として登録しました。そして、eco moving製品のうち、お客様のCO2排出量削減に貢献するHFDsystem®等の製品を対象に、「CO2削減貢献量」の算定を開始しました。
【環境】
2050年のカーボンニュートラルの実現および2030年度目標(2013年度54,703t比CO2排出量38%削減/当社単体:SCOPE1、2)の達成へ向けた取り組みの一環として、省エネ設備の計画的な導入やエネルギーロス削減のための対策に注力しました。また、タイ子会社の工場屋上に太陽光発電システムを増設し、2024年12月から稼働を開始したほか、単体のCO2排出量SCOPE1、2の第三者保証を取得しました。2025年度は、国内外⽣産拠点の新たな削減⽬標を設定する計画です。
【労働・安全】
2024年度は南海工場における「無災害記録1,250万時間」達成や、厚生労働省が推進するがん対策推進企業アクションおよび女性会議Working RIBBONの推進パートナーとして「Working RIBBON 80%チャレンジ」へ参加したほか、受動喫煙防止対策を2025年度から開始することを決定しました。また、当社の健康経営に関する取り組みが評価され、2025年3月に「健康経営優良法人2025(大規模法人部門)」に認定されました。また、従業員のキャリア課題を抽出し、若手人材を対象とした座談会を開催するなど、エンゲージメント向上への取り組みも強化しました。
【コンプライアンス・人権】
2023年度に策定した人権方針のもと、人権デュー・ディリジェンスを開始し、当社グループがバリューチェーンに及ぼす人権への負の影響評価を実施し、人権課題を特定しました。そのうえで、人権課題の懸念がある原材料のサプライヤーに対して直接面談し、問題が無いことを確認しました。また、コンプライアンスのさらなる強化を目的に、情報セキュリティや下請法の遵守、安全保障輸出管理の徹底に向けたEラーニング等の従業員教育を強化しました。
【ステークホルダーコミュニケーション】
ネーミングライツを取得しているバンドー神戸青少年科学館(神戸市立青少年科学館)では、同館で行われた2024年11月開催の「第6回ポートアイランドサイエンスフェスティバル」に出展しました。加えて地域に根差した生物多様性の保全活動として、加古川工場では兵庫県絶滅危惧種のフジバカマの栽培、タイ子会社では植樹活動などを実施しました。神戸市内の大学では、当社の事業活動や経営戦略について私自身が講義を行い、また、当社足利工場は地元の高校での出前インターンシップに参加するなど、教育支援活動にも注力しました。

当社は来年創業120年という大きな節目を迎えますが、このように長きにわたって持続的な成長を実現してこられたのは、社会のニーズの変化に柔軟に対応し、各時代で必要とされてきた新たな価値を提供し続けてきたからであると考えます。今後は事業環境の変化のスピードがさらに速まっていくと思いますが、このような環境であるからこそサステナビリティを成長戦略や事業活動の基軸に据え、経営理念に掲げた「調和と誠実の精神をもって、社会に貢献する」ことを実践するためにも、すべてのステークホルダーの皆様とのコミュニケーションを深めていく所存です。

ステークホルダーの皆様におかれましては、今後とも、ご理解とご支援を賜りますようお願い申しあげます。

2025年8月

バンドー化学株式会社 代表取締役社長

バンドー化学株式会社 代表取締役社長 植野富夫