トップメッセージ
- 中期経営計画のもと、サステナビリティの取り組みに注力
- 当社グループの持続的な成長と企業価値向上に向けた中期経営計画「Creating New Value for the Future 1st stage」(以下、CV-1)の1年目であった2023年度は、CV-1の3つの指針「価値創造」「スマートものづくり創造」「未来に向けた組織能⼒の進化」のもと、社会のサステナビリティの追求と、当社グループの持続的な企業価値向上に向けた各重点施策に注力しました。
- 具体的には、CV-1はサステナビリティを経営の中核に据え、「スピード感」や「課題へのフォーカス」を強化しているほか、中計スタート時に刷新した理念体系「Mission/Vision/Value(以下、MVV)」についても現場への着実な浸透を図る必要があることから、私は、国内17拠点と海外8拠点を訪問し、当社グループの価値創造の現場を支える従業員と積極的に対話する機会を設けました。この取り組みでは、当社グループが目指す方向性やCV-1の「3つの指針」について私自身の言葉で説明、意見交換を行うなど従業員と直接対話する機会を拡充しました。お互いの思いを肌で感じながら、私自身も現場への理解が深まり、手応えを感じています。今後も、こうしたエンゲージメントを含むサステナビリティ課題をさらに進めるとともに、社外取締役も含めた議論を行い、グローバルなサステナビリティ開示動向にも対応するなど、引き続き経営課題の中核としてサステナビリティに取り組んでまいります。
- サステナビリティを経営の中核に―中期経営計画1年目の総括
- 指針1「価値創造」においては、コア事業と新規事業の双方で、サステナビリティに貢献する製品展開が進みました。自動車の電動化が進むなか、電動パワーステアリング用ベルトの販売や、効率的な熱マネジメントを可能にした低温焼成型金属ナノ粒子製品「FlowMetal®」の引き合いが増加したほか、食糧生産を支える農機用ベルトの販売も伸長しました。加えて、人々のウェルビーイングに貢献する医療機器・ヘルスケア機器市場へも新製品を上市し、吸収性骨再生用材料の販売が計画を上回ったほか、患者と看護師の双方の負担を軽減する抜去動作検知システム「抜去アラート®」の販売も開始しました。2024年度は、このような新規事業をさらに進化させるべく、外部との連携や戦略投資を強化していきます。
- 指針2の「スマートものづくり創造」においては、未来の「バンドー夢工場」の実現への布石としてデジタル技術の活用を加速しました。ビッグデータやAIを活用した自働化に向けて、様々な工程に設置したセンサーからの情報を駆使し「人による記録作業の廃止」「スキル・ノウハウをデータ化した無人化・自律化への取り組み」を強化したほか、「スマート製法の開発」を担うデジタル人財の育成にも取り組みました。2024年度は、「バンドー夢工場」が掲げる「安全・安心で地球環境にやさしいものづくり」を着実に実践すべく、AI/IoT/ロボット技術等を活用した工程開発や、生産性、資源、エネルギー効率を高める技術・製法の開発、改善に注力します。
- 指針3「未来に向けた組織能力の進化」においては、会社への貢献意欲や、会社と従業員の一体感/信頼関係等を定量的に把握するための「エンゲージメントサーベイ」を開始しました。結果を職場ごとのグループミーティングで共有しながら直接対話を通じて問題点を抽出し、改善に向けたアクションプランを策定・実施しています。2024年度は、引き続き個々の人材の価値観も大切にしながらエンゲージメントの向上を図ります。また、SCOPE3のCO2排出量算定への準備を進め、2023年度分から開示をスタートさせるなど、気候変動リスクに向き合い、社会の発展に寄与する取り組みを進めています。
- 外部環境認識
- 足元では天然ガス・原油等のエネルギー価格や原材料価格の高止まりが続き、各地の戦争/紛争も収束の兆しが見えないほか、気候変動リスクが激甚化するなど、VUCA※の様相がますます強まる傾向にあります。経営の舵取りも一段と難しくなりつつありますが、私は今後も常に現場へと足を運び、ステークホルダーの皆様との対話を積み重ねながら本質を見極め、社会のサステナビリティの追求と、当社グループの持続的な企業価値向上に注力していく所存です。
※ Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)
- 「サステナビリティ活動テーマ」
- 2023年度および足元の取り組み
運用6年目となった「サステナビリティ活動テーマ」(旧「CSR推進テーマ」)について、2023年度は各テーマにおいて様々な進捗がありました。 - 【製品・サービス】
2023年度の当社上市製品に占める環境対応製品の割合は66%となり、目標(当社単体50%以上)を達成することができました。また、生産工程で生じる廃棄物およびCO2排出量を低減した自動車向け補機駆動用伝動ベルトや5G基地局向け放熱シートなど4品目を新たなeco moving対象製品として登録しました。加えて、2024年4月には伝動ベルトとして世界で初めてセルロースナノファイバーを適用したダブルコグベルトを大型バギー、大型スクーター等向けに上市するなど、ベルトの長寿命化や駆動システムのコンパクト化によるCO2出量の削減を通じて、持続可能な地球環境の実現に貢献しています。 - 【環境】
2050年のカーボンニュートラルの実現および2030年度目標(2013年度54,703t比38%削減、当社単体、SCOPE1、2)の達成へ向けた取り組みの一環として、2023年度は太陽光発電システムを中国とスペインの子会社に導入しました。2024年度はグループ会社で2030年度目標およびその目標達成に向けたロードマップを具体的に策定中であるほか、6月には、TCFDに基づく気候変動関連の情報開示において「1.5℃~2℃シナリオ」を「1.5℃シナリオ」に改めるなど、グローバル視点をふまえたブラッシュアップを図りました。 - 【労働・安全】
2023年度は前述の通りエンゲージメントへの取り組みを本格化したほか、安全への取り組みにおいては「安全総点検」と「安全原点回帰」を推進し、2023年10月には足利工場が「栃木労働局長表彰」奨励賞を受賞したほか、2024年1月には南海工場が、死亡災害および休業1日以上の災害発生ゼロの無災害記録延べ1,250万時間を達成し、厚生労働省から「無災害記録証第四種」を授与されました。 - 【コンプライアンス・人権】
2023年4月に人権方針を策定し、その内容についてグループ全従業員への周知を図りました。また、サプライチェーン全体を見渡したサプライヤーアセスメントやその結果に基づくサプライヤーへのフォロー面談を2023年度も継続したほか、人権デュー・ディリジェンスへ向けた準備もスタートさせました。コンプライアンスの強化に向けては、情報セキュリティや下請法の遵守に加え、安全保障輸出管理のためのe-ラーニング等も取り入れるなど、従業員教育の強化を図りました。 - 【ステークホルダーコミュニケーション】
次代を担う青少年の認識を深め、豊かな創造性を養うことを目的に取得しているバンドー神戸青少年科学館(神戸市立青少年科学館)のネーミングライツについては、2024年4月からの5年間についても契約を更新しました。また、2024年1月に発生した能登半島地震に対しては、会社および従業員の双方から義援金の寄付を行いました。国内外にある事業所の地域社会のニーズに沿った形で清掃活動や教育支援などのCSR活動を継続しており、タイでは植樹活動、フードロス削減への取り組みにも注力しました。
当社グループは今後も、中期経営計画やMVV、マテリアリティやサステナビリティ活動テーマへの取り組みに注力するとともに、特に経営理念「調和と誠実の精神」の実践にあたっては、当社グループの多様な価値観をもつ人材やステークホルダーとの対話を重ねることで生み出される「集合智」を、新たな価値創造やイノベーション、サステナビリティの実現につなげていく所存です。
ステークホルダーの皆様におかれましては、今後とも、ご理解とご支援を賜りますようお願い申しあげます。
2024年8月
バンドー化学株式会社 代表取締役社長